古物を売買する場合は原則、古物商許可を取得しなければいけません。しかし一言で“古物を売買”といっても、「どんな売買を行うと古物商許可が必要になるのか」、また、「古物を売買する場合でも、古物商許可が不要になるケースはないのか」等、迷ってしまいますよね。
そんな古物の売買に関する疑問は、本記事を読んでいただければ簡単に理解できます。
本記事では、『【必要】古物商許可が必要な売買例とは【不要】』について詳しくご紹介します。
目次
古物の売買には古物商許可の取得が必要
古物を売買するには原則、古物商許可の取得が必要ですが、「古物を売買する」という意味を正しく理解するために、以下二つの言葉の意味を確認する必要があります。
- 古物とは
- 売買とは
古物とは
古物営業法では、“古物”を以下のように定義しています。
古物営業法第2条第1項
この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。
上記内容を分かりやすく分類すると、古物とは以下3項目のいずれかに該当する物品ということです。
- 一度使用された物品
- 使用されない物品で使用のために取引されたもの
- これらいずれかの物品に「幾分の手入れ」をしたもの
一度使用された物品とは
“一度使用された物品とは”とは、一度消費者に流通した物品、いわゆるリサイクル品です。なお、ここでいう“使用”とは、その物本来の目的に従って使うことをいいます。たとえば、「衣類→着用」、「自動車→運転」、「カメラ→撮影」といった使用方法が該当します。
一方、その物本来の目的にしたがって使用することができない物は、一度使用された物品のうち幾分の手入れを行っても古物には含まれないため注意が必要です。
使用されない物品で使用のために取引されたものとは
“使用されない物品で使用のために取引されたもの”とは、一度消費者の手に渡った新品を使用せず、そのまま売却するような場合の物品をいいます。
たとえば、私が某家電量販店でNintendo Switchを購入し、一度もNintendo Switchを使用せずリサイクル店に売却した場合、Nintendo Switchの見た目は新品であったとしても、法律上は古物に該当するということです。
幾分の手入れとは
“幾分の手入れ”とは、当該物品の部分的な修理・加工をいいます。電池が切れた時計を修理する場合や、着物を現代風な洋服にリメイクする等は幾分の手入れの範囲内といえます。
一方、その物本来の用途・目的に変更を加えるような修理・加工については、幾分の手入れとはいえません。
たとえば、形状に本質的な変化を加えなければ利用できない「繊維くず・鉄くず・古新聞」等は、いわゆる廃品であり、古物には該当しないことになります。
売買とは
“売買”については、あまり難しく考える必要はありません。
「古物を販売する・古物を買い取る」の両行為が古物営業法上の売買に該当するということです。
仕入れの場合も売買に該当する
“仕入れ”とは、リサイクル店やオークションサイト・フリマアプリ等で古物を購入することをいいます。
上記「古物を販売する・古物を買い取る」の両行為に該当する以上、仕入れの場合であっても古物営業法上の売買とみなされます。
「古物を買い取る」という言葉だけで考えると、古物を一般消費者から古物を買い取るという意味に限定してとらえがちですが、リサイクル店やオークションサイト・フリマアプリ等から古物を購入する行為も古物営業法上の売買に該当するということを理解しておきましょう。
古物商許可が必要な売買例
ここまで古物営業法上の「古物」及び「売買」の意味についてご紹介してきました。
上記内容を踏まえて古物商許可が必要な売買例は以下のとおりです。
いままでご紹介した内容とあわせて確認してください。
【古物商許可が必要な売買例】
- 古物を買い取って売る
- 古物を買い取って修理等して売る
- 古物を買い取って使える部品等を売る
古物商許可が不要な販売例
前項まで古物商許可が必要な売買例をご紹介しました。
一方、例外ではありますが、古物商許可を取得せずに古物の取引を行える場合も存在します。古物営業法は、「盗品等の売買の防止・盗品の速やかな発見・窃盗その他の犯罪の防止及びその被害の迅速な回復」を目的としており、この目的に関係が無い部分については許可の取得を要件としていないからです。
第一条
この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
古物商許可を取得せずに古物の取引を行える場合とは、以下のとおりです。
【古物商許可が不要な販売例】
- 不用品を販売した場合
- 輸入した古物を販売した場合
- 古物の買取りを行わず、古物の売却だけを行う場合
- 自分が販売した顧客から買い戻す場合
以下、詳しくご紹介します。
不用品を販売した場合
自己で使用した物品を不用品として販売する場合に、古物商許可の取得は不要です。古物営業法は、「転売目的」での古物の売買を規制しているに過ぎないからです。
不要になった本をブックオフ等に売却する際、許可が必要ないことをイメージしていただくと、理解しやすいと思います。
輸入した古物を販売した場合
海外から輸入した古物を販売する場合に、古物商許可の取得は不要です。前述のとおり、古物営業法は「盗品等の売買の防止・盗品の速やかな発見・窃盗その他の犯罪の防止及びその被害の迅速な回復」を目的としており、この法律の建前は“日本国内での盗品の流通・犯罪の防止”を目的としているからです。
海外から輸入した古物が仮に盗品であったとしても当該被害は海外で発生するものであり、日本国内において被害が生じるものではないということです。
なお、古物商許可が不要になるケースは、海外から直接仕入れた場合に限定されます。たとえば、日本国内の輸入代理店を介し、古物を仕入れた場合、一度日本国内の事業者を介している以上、原則に従い古物商許可が必要になるため注意しましょう。
古物の買取りを行わず、古物の売却だけを行う場合
古物の売却だけを行う営業については古物営業法上、許可対象から除外されているため、古物商許可の取得は不要です。
たとえば、廃品回収業者が古物を無料で引受け、当該物品を修理した上で販売する場合は古物商許可の取得は不要になります。また、廃品回収業者が古物を有料で引受け、当該物品を修理した上で販売する場合も同様に古物商許可の取得は不要になります。
事業者が客に対価を支払って古物を引き取る場合は、古物商許可が必要になるため注意してください
自分が販売した顧客から買い戻す場合
自分が販売した顧客から買い戻す場合に、古物商許可の取得は不要です。たとえば、ある業者Aが物品を顧客Bに販売し、その後BからAが“第三者を介さず”にその物品を買い戻すといった行為が該当します。
なお、物品を買い戻す際に一度でも第三者が介在すれば、古物商許可が必要になるため注意しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
本記事は、『【必要】古物商許可が必要な売買例とは【不要】』について詳しくご紹介します。
本記事を読んでいただければ、古物商許可が必要な売買例に限らず、不要な例も併せて理解することができます。
古物商許可の取得を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
古物の「買取のみ」行う場合に古物商許可は必要?